労働・社会保険
2025.11.26
こんにちは、アルク社会保険労務士法人です。
今回は「在籍型出向」の場合の社会保険の適用についてご説明します。
在籍型出向とは、出向元企業(元の企業)と出向先企業(別の企業)との間の出向契約によって、労働者が出向元企業と出向先企業と両方と雇用契約を結び、出向先企業に一定期間継続して勤務することです。

参照:厚生労働「在籍型出向「基本がわかる」ハンドブック」
給与の負担について、出向元企業か出向先企業かどちらの企業が負担をするのかですが、明確な定めはありません。
基本的には出向元企業と出向先企業の双方の企業が出向契約での取り決めに基づいて処理することとなります。
給与の支払い方法は、以下の方法があります。
・出向先企業が出向労働者に直接支給
・出向先企業が出向元企業に対して給与負担金を支払い、出向元企業が出向労働者に支給
在籍出向の場合の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入は、主に報酬の支払いと指揮命令関係に基づいて判断されます。
在籍出向では、雇用契約が出向元企業に残り、給与も出向元企業から全額または一部支給されるケースが多いため、以下の原則が適用されます。
原則:出向元企業で継続するのが基本
給与(報酬)の大部分を出向元企業が支払っている場合、または、給与の支払い割合に関わらず、出向元企業が出向期間中の社会保険料を継続して負担すると労使間で明確に定めている場合は、引き続き出向元企業が適用事業所となります。
この場合の手続きは不要です。
例外:実態として出向先企業での勤務や給与支払い状況によっては下記のようなケースもあります。
・出向先での労働時間や責任などが増加した結果、出向先企業から支払われる給与が上回って出向先企業が主たる事業所と判断された場合、出向元で資格喪失をして、出向先で新たに加入し直す必要があります。
・出向元企業と出向先企業の双方で被保険者となる場合(別の給与形態で双方から給与を受ける場合や、出向先で役員に就任した場合など)当該出向労働者が選択した事業所を主たる事業所として、二以上事業所勤務届を届け出る必要があります。
【お問い合わせ先:事業所を管轄する年金事務所、健康保険組合】
雇用保険は、失業した場合などに給付を行う保険です。
これは、労働者と企業がそれぞれ保険料を負担し、「主たる賃金を受けている事業所」で加入します。
原則:主たる賃金を受けている事業所
兼務出向と同様に、労働者に賃金を多く支払っている事業所を「主たる事業所」として判断し、その事業所で加入します(二重加入はできません)。
・出向元企業からの賃金が多い場合:引き続き出向元企業で雇用保険に加入
・出向先企業からの賃金が多い場合:出向先企業で雇用保険に加入し直す(出向元企業での資格を喪失する)
手続き:出向労働者が出向先企業で新たに雇用保険の被保険者となる場合は、出向元企業での資格喪失手続きと出向先企業での資格取得手続きが必要です。なお、「雇用保険 被保険者資格喪失届」の喪失原因のについて、出向先で被保険者になる在籍出向の場合は、喪失原因は「1(離職以外の理由)」となります。
手当の算定:失業給付などの算定基礎となる賃金は、原則として両社から支払われる賃金を合算して計算されるわけではありません。あくまでも、雇用保険の被保険者となっている企業から支払われた賃金のみが基礎となります。
【お問い合わせ先:最寄りのハローワーク】
労災保険は、労働者が業務中や通勤途中に負傷した場合などに給付を行う保険です。
これは労働者を「使用している事業所」が加入するものであり、保険料は全額事業主負担です。
出向先企業で適用:在籍出向の場合、労働者は出向先の指揮命令下で業務に従事し、労務を提供しています。したがって、労災保険については、出向先企業が労働者を使用する事業主として扱われ、出向先企業の労災保険が適用されます。
手続き:特に新たな手続きは不要ですが、万が一労災が発生した場合は、出向先企業が労働者災害補償保険の申請手続きを行います。
※「兼務出向」の場合の労災保険については次項に記載します。
【お問い合わせ先:最寄りの都道府県労働局または労働基準監督署】
兼務出向とは、従業員が出向元企業での勤務を継続しつつ、同時に出向先企業でも勤務する形態です。
出向元企業との雇用関係を維持しながら、出向先企業とも新たな労働関係を結び、両社から報酬を受け取ります。
兼務出向の場合も、健康保険・厚生年金保険は原則としていずれか一方の事業所のみ加入が認められます(二重加入はできません)。
在籍出向と同様に「報酬の支払いの実態」が最も重要な判断基準となりますが、両社で同時に勤務するという特性から、判断基準がより厳格になります。
社会保険の原則:主たる事業所での継続加入
従業員は、以下の基準により「主たる事業所」を決定し、その事業所で社会保険に加入します。
1報酬額: 報酬(給与)を多く支払っている事業所
2労働時間:労働時間が長い事業所(報酬額が同程度の場合に考慮)
3生計の維持: その報酬が主に生計を維持していると認められる事業所
4本人の選択:従業員本人が加入を希望する事業所(上記で判断がつかない場合)
ほとんどの兼務出向のケースでは、報酬の支払い実態(どちらの会社からより多くの報酬を受け取っているか)によって主たる事業所が決定されます。
・出向元企業からの報酬が多い場合: 引き続き出向元で社会保険に加入
・出向先企業からの報酬が多い場合:出向先企業で社会保険に加入し直す(出向元企業での資格を喪失する)
労災保険について
適用:兼務出向の場合の労災保険については、出向元企業と出向先企業の両方の適用となります。
労災の事故が発生してしまった場合は、事故発生時の労務提供先の労災保険が適用の対象となります。事故の原因がいずれの労務提供先の業務なのかが明らかでない場合には、労働基準監督署が決定することになります。
保険料:保険料の計算・納付の算定方法としては、出向契約等において定められた、出向元及び出向先の労働に対する賃金を、出向元及び出向先それぞれが自社(事業所)に計上することとなります。
「業務割合」という観点ではなく、「それぞれの労務提供先における労働に対する賃金」という観点にて計上するというのが正しい手続きとなります。
在籍出向とは、出向元企業(元の企業)と出向先企業(別の企業)との間に出向契約を結び、労働者が出向先企業に一定期間継続して勤務することです。
期間終了後、原則として出向元企業に復帰することが前提となります。
出向労働者の給与に関する社会保険・労働保険における取り扱いは、個別の出向契約の内容によって異なります。
在籍出向は適用関係において複雑なため、トラブルを避けるためにも、出向契約時に社会保険の負担と手続きに関する取り決めについて出向契約書で定めておくことが必要です。
参考:厚生労働「在籍型出向「基本がわかる」ハンドブック」
それでは。
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