コラム
2026.9.29
こんにちは。アルク社会保険労務士法人です。
従業員が病気で休職して給与が出なくなると、社会保険料を給与から控除できなくなります。
ただ、給与がゼロになったからといって、社会保険の資格がなくなるわけでも、保険料が免除されるわけでもありません。
今回は、健康保険・厚生年金保険に加入している従業員が私傷病で休職した場合について、会社からよく質問をいただく点をQ&A形式で解説します。
外れません。
療養のために給与が一時的に止まっていても、会社との使用関係が続いていれば、被保険者資格はそのまま続きます。
健康保険法第3条及び厚生年金保険法第9条において、適用事業所に「使用される」ことを加入の基本的な要件としています。
休職中も、この使用関係が実際に続いているかどうかで判断していくこととなります。
「休職と被保険者資格について」(昭和26年3月9日保文発第619号)においては、資格喪失を要しない病気休職等では、賃金の支払停止は一時的なもので、使用関係は続いているという考え方が取られています。
一方で、雇用関係が形式上残っていても、個々の事情から実態として使用関係がなくなったと判断されれば、資格喪失になるという判断となります。
原則としては、休職期間の長さだけで判断したり、復職日が決まっていないという理由だけで資格喪失届を出したりしないよう注意しておくことが必要です。
免除されません。
傷病手当金は、病気やけがで働けず、十分な給与を受けられないときの生活を支えるための給付です。
保険料の免除とは別の制度ですので、資格が続いていて法定の免除に該当しなければ、受給中も保険料は発生します。
保険料は、その月に実際に支払った給与額ではなく、標準報酬月額を基に計算します。
無給になったからといって、標準報酬月額がゼロになるわけではありません。
例えば、定時決定の際に、病気欠勤等で4~6月のいずれの月も報酬を受けていない場合は、「保険者決定(ホケンジャケッテイ)」として、従前の標準報酬月額で決定するとされています。
ただし、休職中はずっと同じ保険料額になるわけではなく、保険料率によって保険料額は変動するため、従業員に保険料額を伝える際は注意が必要です。
なお、産前産後休業や育児休業等には、要件を満たしたうえで事業主が申し出れば保険料が免除される制度がありますが、私傷病休職には、この免除はありません。
会社に籍が残っているというだけでは、同じ扱いにはなりません。
日本年金機構の疑義照会回答には、看護学校への通学に伴う休職の事例があります。
この事例では、会社が人材育成のために通学を指示し、従業員は在籍したまま無給で休職していました。
会社は学費を貸し付け、出席状況も確認していました。
会社と本人のどちらも、保険料を負担して加入を続けたいという意向でした。
それでも回答は、資格喪失として取り扱うとしています。
通学中は通常の労務の提供がなく、相当期間にわたって休職・無給が続く見込みのため、賃金の支払停止を一時的なものとはいえず、事実上の使用関係を認めることが困難だとしたものです。
あくまで通学目的の休職という個別の事情に対する回答ですので、「長期の無給休職なら資格喪失」と一般化して、病気休職にまで当てはめることはできませんが、この事例から読み取れるのは、会社の指示や労使の希望があっても、それだけで加入要件を満たすことにはならないという点かと考えます。
健康保険・厚生年金保険の保険料は原則として労使で折半し、会社が双方の負担分をまとめて納付します(健康保険組合では、規約によって会社の負担割合を増やしている場合があります)。
本人からまだ受け取っていない分があっても、会社の納付義務は変わりません。
給与がなければ通常の給与控除はできないため、本人から会社へ振り込んでもらうなど、別の方法で徴収することになります。
この場合、一般的には以下の方法が考えられます。
・比較的短期での復職が見込まれる場合は、保険料の被保険者負担分を一時的に会社負担を行い、従業員の復帰後に未控除分を一括(分割)控除を行う。
・比較的長期の休職期間が見込まれる場合は、毎月従業員へ請求書(書面又はメール)を発行し、会社指定の日に指定額を振込してもらう。
なお、支払いが難しい場合や金額に疑問がある場合の連絡先についてはあらかじめ従業員へ共有しておくことをおすすめします。
また、給与控除から振込に切り替える最初の月は、最後の給与で何月分の保険料まで控除したかを確認し、二重徴収や請求漏れがないようにしておくことも必要です。
それでは。
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