労働・社会保険
2026.1.22
こんにちは。アルク社会保険労務士法人です。
本日は、よくあるご質問として、在宅勤務者の交通費の取り扱いについて取り上げます。
Q.「一週間のうち、およそ3日間は自宅で在宅勤務し、残りの2日は打合せのために出社している場合、自宅と事業所の移動にかかる出社の際の交通費は、通勤手当として支給すべきでしょうか?それとも旅費交通費として経費精算すべきでしょうか?」
現在、在宅と出社のハイブリッド型の働き方が増えています。従来、月額の通勤手当として支給していた交通費を、出社回数に応じて日額支給としている会社も多いです。
日額で出社の都度支払われる交通費は、従来通りの通勤手当として支給すべきでしょうか。それとも、立替経費として経費精算すべきでしょうか。
まず前提として、通勤手当と旅費交通費の違いを確認しておきましょう。
通勤手当として支給する場合は、労働保険上の賃金、社会保険上の報酬等に含まれることとなります(労働の対償として使用者が労働者に支払うものは、基本給や手当等の名称を問わず、すべて賃金・報酬に含まれます)。
一方、旅費交通費として清算する場合は、労働の対償ではなく実費弁償であるため、賃金・報酬等に含まれません。
なお、所得税法上は、いずれも非課税となります(ただし、非課税上限枠まで)。
つまり、通勤手当として支給すれば、その額が保険料額・保険給付の額※に影響を与えることとなり、経費清算する場合は影響しないという違いがあります。
※ 例:基本手当(いわゆる失業手当)、老齢厚生年金、傷病手当金
さて、冒頭の疑問、在宅と出社のハイブリッド型の場合にかかる出社時の交通費をどう支給するかについて、結論からお話しますと、次の2つに両方当てはまる場合には、旅費交通費として経費精算することが可能と考えられます。
1.交通費を実費支給している
2.就業場所を自宅としている
日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」によると
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/jireisyu.pdf
在宅勤務・テレワークを導入し、被保険者が一時的に出社する際に要する交通費を事業主が負担する場合、当該交通費は「報酬等」に含まれるのか。
(答) 基本的に、当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅か事業所かに応じて、それぞれ以下のように取扱う。
① 当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅の場合
労働契約上、当該労働日の労務提供地が自宅とされており、業務命令により事業所等に一時的に出社し、その移動にかかる実費を事業主が負担する場合、当該費用は原則として実費弁償と認められ、「報酬等」には含まれない。
② 当該労働日における労働契約上の労務の提供地が事業所とされている場合
当該労働日は事業所での勤務となっていることから、自宅から当該事業所に出社するために要した費用を事業主が負担する場合、当該費用は、原則として通勤手当として「報酬等」に含まれる。
まず、交通費が日額支給される場合でも、「出社1回500円」のように、実際にかかる金額によらずに通勤手当を計算・支給する場合には、実費支給されているとはなりません。
就業規則上においても、「在宅勤務者には通勤手当は支給ぜず、実費支給とする」旨が明記されているのが望ましいでしょう。なお、金額が同じであっても、「在宅勤務者の通勤手当は、出社回数に日額単価を乗じて支給する」と記載する場合には、実費弁償ではなく通勤手当が支給されていると考えられます。
次に「就業場所を自宅としている」について、「労働契約上の労務の提供地」とは、雇用契約書や就業規則(在宅勤務規程など)において定められる「就業場所」と同義となります。
雇用契約書において、例えば「就業場所は自宅とする。ただし、業務上必要な場合は事業所への出社を命じる」と記載しておくと、「労務の提供地が自宅である場合」に当てはまると解されます。また、「就業場所は自宅または事業所とする」と記載して、出社日は都度決定する労働契約とすることも方法の1つです。
なお、「就業場所は月・火曜は事業所、水~金曜は自宅とする」など、日ごとに就業場所が明確である場合には、「当該労働日の労働契約上の労務の提供地」の判断が可能であるため、月・火曜の交通費は通勤手当として支給、水~金曜の在宅勤務日に急遽出社を命じられることがあった場合には旅費交通費として経費清算することが望ましいと考えられます。
在宅・出社のハイブリッド型の働き方において、出社が一時的である場合には交通費を通勤手当に含めない(経費清算する)ことが可能です。
一時的な出社にかかる交通費も従来通りの通勤手当に含めて支給している場合には、交通費の支給方法、就業規則や雇用契約書の記載方法を見直すことが可能と考えられます。
ただし、在宅勤務の割合が減り、一時的に出社するとは言えないほどに、事業所への通勤が増える場合には、事業所への移動にかかる交通費が通勤手当とみなされる可能性もありますので、注意が必要です。定期的に労働者ごとの出社回数を確認する仕組みを作り、実態に合わせた運用を行いましょう。
また、在宅勤務を限定とする特約的な労働契約を締結していた場合において、労働者の合意を得ずに、使用者が一方的に出社中心の働き方へと契約変更してしまうことは、原則できません。このような在宅勤務特約を有する労働契約の締結や変更をする際には、十分に留意しましょう。
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