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【個別労働紛争】相談119万件から見る社内相談の初動対応

【個別労働紛争】相談119万件から見る社内相談の初動対応

コラム

2026.7.12

こんにちは。アルク社会保険労務士法人です。

令和8年7月7日に「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました。

総合労働相談件数は119万8,010件となり、18年連続で100万件を超えています。
また、民事上の個別労働関係紛争の相談では、「いじめ・嫌がらせ」が5万5,614件で14年連続最多となりました。
助言・指導の申出では「労働条件の引下げ」が1,220件、あっせんの申請では「解雇」が892件で、それぞれ前年度より増加しています。

出典:「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します ~総合労働相談件数は、引き続き100万件を超え、高止まり~

これらは労働局等へ寄せられた相談の集計ですが、会社にとっては、従業員から相談があった時点で何を聞き、どの資料を確認し、どのように記録を残すかを見直す材料になります。

社内相談を受けた日に残す記録

従業員から相談を受けたときに、最初から「ハラスメントに当たる」、「本人にも問題がある」などと結論を出すのは避ける必要があります。
まず、相談者が話した内容と会社が確認した事実を分けて記録します。

相談を受けた日には、少なくとも次の内容を残しておきます。

・いつ、どこで、誰から、どのような言動があったか

・相談者が会社に求めている対応は何か

・メール、チャット、録音、勤怠記録などの資料があるか

・心身の不調や安全面から急いで対応すべき事情があるか

相談者が求めていることは、行為を止めてほしい、配置を離してほしい、事実を調べてほしいなど一様ではありません。
会社が約束できること、確認に時間がかかること、関係者への聞き取りが必要になることを説明し、次にいつ連絡するかも伝えてください。

いじめ・嫌がらせは結論より先に事実確認

「いじめ・嫌がらせ」5万5,614件は、民事上の個別労働関係紛争として計上された件数です。
労働施策総合推進法上の職場のパワーハラスメントに関する相談は別の枠組みで対応されているため、この数字だけで職場のパワーハラスメント相談全体を示すものではありません。

一方、厚生労働省のハラスメント対策に関する案内では、相談体制の整備、事実関係の迅速かつ正確な確認、被害者・行為者への適正な対処、再発防止などが事業主の講ずべき措置として示されています。
相談者や行為者等のプライバシーを保護し、相談や事実確認への協力を理由とする不利益な取扱いを行ってはならない旨の周知も必要となります。

参考:職場におけるハラスメントの防止のために

労働条件を引き下げる前の合意と説明資料

今回の調査では、助言・指導の申出では、「労働条件の引下げ」が1,220件で最も多く、前年度比10.6%増となりました。

労働契約ポータルサイトでは、労働条件の変更は労使の合意が原則とされています。
使用者が一方的に就業規則を変更して労働者に不利益な変更をすることは原則としてできず、就業規則によって変更する場合は、変更内容の合理性と変更後の就業規則の周知が必要となります。

賃金、手当、勤務日数、勤務地、役職などを変更する場合は、以下の点について対応できているか確認が必要です。

・労働条件の変更通知書の交付

・本人へ説明した内容、質問への回答、合意の有無

経営上の必要性があっても、説明の経過が残っていないと、後から「同意していない」、「聞いていた内容と違う」という紛争につながりやすくなりますので、一連の変更プロセスにおける記録化が必要となります。

参考:労働契約ポータルサイト

解雇を決める前に

あっせんの申請では、「解雇」が892件で最も多く、前年度比12.6%増となりました。

労働契約法第16条において、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効になるとされます。
勤務態度の問題などがあっても、1回の失敗だけで直ちに解雇が認められるわけではありません。

解雇を検討する場合は、就業規則上の根拠、本人に示した注意・指導、改善の機会、同様事案との取扱い、配置転換など他の選択肢を検討した経過を確認します。
また、原則として30日前の解雇予告、または不足日数分の解雇予告手当も必要です。
ただし、予告や手当を行えば解雇自体が有効になるわけではありません。

参考:労働契約の終了に関するルール

「会社が正しいか」を答える前に

個別労働紛争は、相談を受けた直後の言葉や記録が、その後の対応に大きく影響します。
経営者や直属の上司だけで処理せず、相談受付、事実確認、判断、本人への回答内容についての、会社としての対応経過の記録化を適切に行っておくことが必要です。

以下の資料をしっかりと整備・記録化できているか確認を行ってください。

・相談受付票

・関係者ごとの聞き取り記録

・メール等の客観資料

・雇用契約書、就業規則

・過去の注意、指導記録

・会社が判断した理由

・本人へ回答した内容

判断に迷う場合は、処分や労働条件変更、解雇を伝える前に、社会保険労務士へご相談ください。

それでは。

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